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美少女吸血鬼は合コンに誘われたい

1.美少女ラクロス部員は出会いを求めている。

「だからさぁ・・・一回でいいから参加して欲しいんだってばぁ！」

学生たちに安く食事を取れるよう学園が運営しているバッフェ形式のレストラン&カフェテリアである。

厨房で調理されたものだけでなく有名なレストランやファストフードチェーンもここに出店している。

OBの有名建築家が設計した内装はホテルのレストランと見間違えるほどの豪奢さで、著名人が貸切でプライベートなパーティを行うこともしばしばあると言う。

午前の講義を終え、ナディアは橙子と話があるから、と紗姫にランチのトレーを取ってきてもらうように頼み、橙子と合流した。

ナディアは橙子から昼休みに話があると声をかけられていたので一緒に昼食を取ることにしていたのだ。

学生たちの賑やかな会話の中、蓜島橙子の声が弱々しくナディアの耳に聞こえてくる。

「参加と言われても私と紗姫はまだ未成年だぞ？」

「大丈夫大丈夫、なんでも経験だってば！」

「だが紗姫がなんと言うかなぁ、アイツはこの私がそばにいないとからっきしだからなぁ、うんうん、」

「誰がからっきしなんですか？」

2人分のランチを取りに行っていた紗姫が二人の席に戻ってきた。

「ちわ！藍澤さん、今日も綺麗だねぇ！」

「からかわないでください蓜島さん！」

「橙子のいう通りだぞ紗姫、お前は綺麗だ、綺麗というより美しいというべきか、そうだな喩えていうなら・・・」

「浮かんでこないなら喩えないでください！」

「アハハハハハ！全く、あんたたち2人は仲がいいよな！いつでも一緒にいるし仲良く喋っていたかと思ったら、今みたいに藍澤さんがナディアのことを言葉責めしてるし」

「紗姫はな・・・毎晩毎晩私のことを責めるんじゃよ、『いつまでグズグズやってるのこの役立たずの貧乳娘！そんなんじゃいつまで経っても私の様なダイナマイトボディになれないわね、おーっほっほっほっほ・・・』って！紗姫！やめろ、」

「ナディアさんはほんっとに！・・・お話を作るのがお上手ですね！」

紗姫はナディアのこめかみを拳で押さえつけながら、

「そんなこと妄想する暇があるなら課題くらい余裕でできますよね！！」

「なんだよナディアはまた課題すっぽかしたのかよー？」

「すっぽかしたのではない！謎の組織が私の記憶を操作して先週の課題なんてなかったと思い込まされていたのだ！」

「謎の組織とやらのやることが小さすぎます！」

「まぁまぁ、続きは家でやってもらうとして・・・話を戻すんだけどさぁ」

お知らせ購読権所有者の方は番外編を読むことができます。第三話「美少女吸血鬼は合コンに誘われたい」<h2>1.美少女ラクロス部員は出会いを求めている。</h2><img src="https://asset.hexanft.com/rich_text_attached_images/6bc2142f-12a4-43de-abb2-2b2459b980c3.png" alt="" width="auto" height="auto">「だからさぁ・・・一回でいいから参加して欲しいんだってばぁ！」昼休みの学生食堂、学生たちに安く食事を取れるよう学園が運営しているバッフェ形式のレストラン&amp;カフェテリアである。厨房で調理されたものだけでなく有名なレストランやファストフードチェーンもここに出店している。OBの有名建築家が設計した内装はホテルのレストランと見間違えるほどの豪奢さで、著名人が貸切でプライベートなパーティを行うこともしばしばあると言う。午前の講義を終え、ナディアは橙子と話があるから、と紗姫にランチのトレーを取ってきてもらうように頼み、橙子と合流した。ナディアは橙子から昼休みに話があると声をかけられていたので一緒に昼食を取ることにしていたのだ。学生たちの賑やかな会話の中、蓜島橙子の声が弱々しくナディアの耳に聞こえてくる。「参加と言われても私と紗姫はまだ未成年だぞ？」「大丈夫大丈夫、なんでも経験だってば！」「だが紗姫がなんと言うかなぁ、アイツはこの私がそばにいないとからっきしだからなぁ、うんうん、」「誰がからっきしなんですか？」2人分のランチを取りに行っていた紗姫が二人の席に戻ってきた。「ちわ！藍澤さん、今日も綺麗だねぇ！」「からかわないでください蓜島さん！」「橙子のいう通りだぞ紗姫、お前は綺麗だ、綺麗というより美しいというべきか、そうだな喩えていうなら・・・」「・・・」「言うなら・・・」「・・・」「なら・・・」「浮かんでこないなら喩えないでください！」「アハハハハハ！全く、あんたたち2人は仲がいいよな！いつでも一緒にいるし仲良く喋っていたかと思ったら、今みたいに藍澤さんがナディアのことを言葉責めしてるし」「責めてません！」「紗姫はな・・・毎晩毎晩私のことを責めるんじゃよ、『いつまでグズグズやってるのこの役立たずの貧乳娘！そんなんじゃいつまで経っても私の様なダイナマイトボディになれないわね、おーっほっほっほっほ・・・』って！紗姫！やめろ、」「ナディアさんはほんっとに！・・・お話を作るのがお上手ですね！」紗姫はナディアのこめかみを拳で押さえつけながら、「そんなこと妄想する暇があるなら課題くらい余裕でできますよね！！」「なんだよナディアはまた課題すっぽかしたのかよー？」「すっぽかしたのではない！謎の組織が私の記憶を操作して先週の課題なんてなかったと思い込まされていたのだ！」「謎の組織とやらのやることが小さすぎます！」「まぁまぁ、続きは家でやってもらうとして・・・話を戻すんだけどさぁ」

「血は苦手なので今日もいちごミルクって言いましたよね？！」第三話

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第二話「美少女吸血鬼は懇願する」

1.美少女吸血鬼は隠れ巨乳が許せない。

日本最古の洋風建築というその事実は伏せられている。

トランシルバニアの建築士が密かに日本を訪れ、吸血鬼の棲み家として建てたもの。

日本での吸血鬼の始祖であるイオネスク家、ナディア・イオネスクはそのイオネスク家の次女である。

長い黒髪、碧い瞳（能力を使う時は真っ赤に変化する）、

街を歩けば下心がはみ出ている男たちやスカウトたちが必ず声をかける美貌の持ち主、だが本人には見た目に対する自覚が全くと言っていいほどないので彼らのことはウザったらしいゴミとしか見ていない

ナディアの場合、生まれつき血を見ることが嫌いな子供であった。

自分や身の回りで怪我をするとその傷口を見るだけで卒倒していたくらいである。

現在の吸血鬼はそのほとんどが血を飲む必要がない程度に人化が進んでいる。それでも病気などで体力が落ちた時に手っ取り早い回復方法として血を飲む場合はある。小さい時は母親吸血鬼の指から血を分けてもらい血に慣れさせるのであるが、ナディアはそれすら拒絶していた。

館の農園で育てられているいちごをすりつぶしたものは食べることができた。結局人間が好む食事を食べることが出来たので両親は一安心したのだが・・・

こうしてナディアは無事、19歳の初夏を迎えていた。

庭師によって手入れの行き届いた敷地の庭園を通り過ぎ、表の道へと向かうふたり、

ナディアの隣には同い年の少女、藍澤紗希が歩いている。

互いの両親が昔からの知り合いであった事から、ふたりは小さい頃から遊んでいる幼馴染である。

背はナディアより高く顔立ちも大人っぽく見られるのでナディアの姉と勘違いされることも多い。

ナディアにとって紗姫は最高の親友ではあるのだが、見た目の完成度について常にコンプレックスを与え続けている存在でもあるのだ。

「ナディア様、唐突に何を言い出すんですか？！」

※お知らせ、発行購読権NFTが20件に修正しました。第二話「美少女吸血鬼は懇願する」<h2>1.美少女吸血鬼は隠れ巨乳が許せない。</h2>ナディアの住む洋館－日本最古の洋風建築というその事実は伏せられている。トランシルバニアの建築士が密かに日本を訪れ、吸血鬼の棲み家として建てたもの。日本での吸血鬼の始祖であるイオネスク家、ナディア・イオネスクはそのイオネスク家の次女である。長い黒髪、碧い瞳（能力を使う時は真っ赤に変化する）、街を歩けば下心がはみ出ている男たちやスカウトたちが必ず声をかける美貌の持ち主、だが本人には見た目に対する自覚が全くと言っていいほどないので彼らのことはウザったらしいゴミとしか見ていないナディアの場合、生まれつき血を見ることが嫌いな子供であった。自分や身の回りで怪我をするとその傷口を見るだけで卒倒していたくらいである。現在の吸血鬼はそのほとんどが血を飲む必要がない程度に人化が進んでいる。それでも病気などで体力が落ちた時に手っ取り早い回復方法として血を飲む場合はある。小さい時は母親吸血鬼の指から血を分けてもらい血に慣れさせるのであるが、ナディアはそれすら拒絶していた。館の農園で育てられているいちごをすりつぶしたものは食べることができた。結局人間が好む食事を食べることが出来たので両親は一安心したのだが・・・こうしてナディアは無事、19歳の初夏を迎えていた。<img src="https://asset.hexanft.com/rich_text_attached_images/56b1bb9e-3a78-49a3-8156-ccfcd2198b45.png" alt="" width="auto" height="auto">庭師によって手入れの行き届いた敷地の庭園を通り過ぎ、表の道へと向かうふたり、ナディアの隣には同い年の少女、藍澤紗希が歩いている。互いの両親が昔からの知り合いであった事から、ふたりは小さい頃から遊んでいる幼馴染である。背はナディアより高く顔立ちも大人っぽく見られるのでナディアの姉と勘違いされることも多い。ナディアにとって紗姫は最高の親友ではあるのだが、見た目の完成度について常にコンプレックスを与え続けている存在でもあるのだ。「特にその胸だ！」「ナディア様、唐突に何を言い出すんですか？！」

「血は苦手なので今日もいちごミルクって言いましたよね？！」第二話

鬼とついているため人間と異なるもの、妖怪やモンスターの類と思われているがそれは間違いである。

彼らは間違いなく人間であり基本的な能力も寿命も人間と変わりはない、

はじまりはルーマニア中央部、トランシルバニア地方の小さな街、

流行病でたくさんの人が亡くなっていた。

そんな街に一人の男が現れた。

その男は街中の人に薬を分け与えた。そしてこう言った。

「あなた達は太陽の光を浴びる事ができなくなるかもしれない、でも安心しなさい、隣人の血を少し分け与える事で生きる事ができる。絶望せずあなた達の子孫が太陽の下で生きていけるように生き続けなさい。」

病から解放されたものの、人々は昼間は戸や窓を閉ざし、陽が暮れると活動をするようになった。

髪は銀色に、目は赤く、闇に強くなり何かしらの魔法めいた術を使えるようになった。

失ったものや与えられたものがあまりに多すぎた。

その街は外界との接触を断ち、静かに時が来るのを待ち続けた。

何十年経った頃、変化の兆しが現れた。

子供達の中に日光の下でも少しの時間とは言え活動できるものが出てきたのだ。

その子達は他の世界で生きるべく成人後街を離れて生きることを命じられた。

外界の人と交わった結果、その子孫達は人化が早く進行していった。半吸血鬼である。

街に残った人々はその血を絶やさずこの地に留まり続けた。外界と交わる事なく緩やかに人に戻る事を選んだのだ。純血種である。

現在世界中に吸血鬼及び吸血鬼の血を受け継ぐ者は100万人程度と言われている。

純血種は千人程度、ただしその殆どが人化がかなり進行していると推測される。

太陽に対する耐性は差があるものの、ほとんどの者が獲得している。特別な能力については減衰する事なく引き継がれている。

空を飛べる者、物や火、水など自然物を自由に操れる者、魔術などと呼ばれる類の能力を備えている。

ほぼ全ての吸血鬼と言う種族に共通している事は

黒化とは満月の夜、感情が闇に堕ちたときなど複雑な条件が重なる事で先祖返りを発動してしまうらしいが今までに数人程度という稀な事である。

吸血鬼とは言うものの、「生きるために人の血を飲み続けなければならない」わけではない。

十字架、銀の弾丸や大蒜など大半は都市伝説的なものである。

ナディアも父親が純血種ではあるが人間の母との混血であるためか、父親より太陽への耐性を獲得している。

純血の吸血鬼達は混血に比べて人化が緩やかであり、場合によっては吸血のみを糧とするもの達も少なからず存在はする。ただし必要な量はごくわずかであり成人の場合交際している相手の喉元にキスマークをつけてその隙に吸血行為に及ぶ事が多い（らしい）

吸血鬼を題材にした映画などで首に噛み付くという演出はここからきているものと思われる。

とはいうものの血を吸う行為は今もなお彼らにとって1番手早い生存手段ではあることは確かである。

また人が血を吸われたからと言って吸血鬼になるわけではない。

人が吸血鬼になるためには「血の契約」という儀式を交わす必要がある。

地球に一番近づく満月の夜、まず互いに同じ食事（一欠片のパンと葡萄酒などが多い）をとる。一方の手にルーマニアの古銭、指に聖なる銀のナイフで傷をつけ、傷口から出た血を相手の指で重ね合わせたまま互いの首元に歯を立てるのだ。

人は指の傷口から吸血鬼の血を体の中に取り込み、

吸血鬼は相手の首元からその牙で血を吸うことで人の血を体の中に取り込む。

そうして体内で互いの血が交わる。

人間は血を交わした吸血鬼同等の人化の状態とランダムに与えられる能力を身につける。

吸血鬼は人間の血を取り込むことで更に人化が進む。

人の血を取り込んだ吸血鬼たちの子孫がまた人の血を取り込む。徐々に人の血が入る事で彼らは人間へ近づいていく。

太陽への耐性はこうして獲得されたのである。

吸血鬼鬼とついているため人間と異なるもの、妖怪やモンスターの類と思われているがそれは間違いである。彼らは間違いなく人間であり基本的な能力も寿命も人間と変わりはない、はじまりはルーマニア中央部、トランシルバニア地方の小さな街、流行病でたくさんの人が亡くなっていた。そんな街に一人の男が現れた。その男は街中の人に薬を分け与えた。そしてこう言った。「あなた達は太陽の光を浴びる事ができなくなるかもしれない、でも安心しなさい、隣人の血を少し分け与える事で生きる事ができる。絶望せずあなた達の子孫が太陽の下で生きていけるように生き続けなさい。」病から解放されたものの、人々は昼間は戸や窓を閉ざし、陽が暮れると活動をするようになった。髪は銀色に、目は赤く、闇に強くなり何かしらの魔法めいた術を使えるようになった。失ったものや与えられたものがあまりに多すぎた。その街は外界との接触を断ち、静かに時が来るのを待ち続けた。何十年経った頃、変化の兆しが現れた。子供達の中に日光の下でも少しの時間とは言え活動できるものが出てきたのだ。その子達は他の世界で生きるべく成人後街を離れて生きることを命じられた。外界の人と交わった結果、その子孫達は人化が早く進行していった。半吸血鬼である。街に残った人々はその血を絶やさずこの地に留まり続けた。外界と交わる事なく緩やかに人に戻る事を選んだのだ。純血種である。そして何百年時が経ち・・・現在世界中に吸血鬼及び吸血鬼の血を受け継ぐ者は100万人程度と言われている。純血種は千人程度、ただしその殆どが人化がかなり進行していると推測される。太陽に対する耐性は差があるものの、ほとんどの者が獲得している。特別な能力については減衰する事なく引き継がれている。空を飛べる者、物や火、水など自然物を自由に操れる者、魔術などと呼ばれる類の能力を備えている。ほぼ全ての吸血鬼と言う種族に共通している事は<ul><li>魔術的な能力を備えていること</li><li>能力を発動する時は通常と髪と目の色が異なること</li><li>黒化した時だけは日光が致命傷になること</li></ul>である。黒化とは満月の夜、感情が闇に堕ちたときなど複雑な条件が重なる事で先祖返りを発動してしまうらしいが今までに数人程度という稀な事である。吸血鬼とは言うものの、「生きるために人の血を飲み続けなければならない」わけではない。十字架、銀の弾丸や大蒜など大半は都市伝説的なものである。ナディアも父親が純血種ではあるが人間の母との混血であるためか、父親より太陽への耐性を獲得している。純血の吸血鬼達は混血に比べて人化が緩やかであり、場合によっては吸血のみを糧とするもの達も少なからず存在はする。ただし必要な量はごくわずかであり成人の場合交際している相手の喉元にキスマークをつけてその隙に吸血行為に及ぶ事が多い（らしい）吸血鬼を題材にした映画などで首に噛み付くという演出はここからきているものと思われる。とはいうものの血を吸う行為は今もなお彼らにとって1番手早い生存手段ではあることは確かである。また人が血を吸われたからと言って吸血鬼になるわけではない。人が吸血鬼になるためには「血の契約」という儀式を交わす必要がある。地球に一番近づく満月の夜、まず互いに同じ食事（一欠片のパンと葡萄酒などが多い）をとる。一方の手にルーマニアの古銭、指に聖なる銀のナイフで傷をつけ、傷口から出た血を相手の指で重ね合わせたまま互いの首元に歯を立てるのだ。人は指の傷口から吸血鬼の血を体の中に取り込み、吸血鬼は相手の首元からその牙で血を吸うことで人の血を体の中に取り込む。そうして体内で互いの血が交わる。人間は血を交わした吸血鬼同等の人化の状態とランダムに与えられる能力を身につける。吸血鬼は人間の血を取り込むことで更に人化が進む。人の血を取り込んだ吸血鬼たちの子孫がまた人の血を取り込む。徐々に人の血が入る事で彼らは人間へ近づいていく。太陽への耐性はこうして獲得されたのである。

吸血鬼についての考察、その1

第一話「美少女吸血鬼はメイドに叱られたい」

主「 ナディア・イオネスク」はイラついていた。

何十年何百年と時を経ても朽ちることなく手入れの行き届いた住まい、広い寝室、豪華だがケレン味のない内装と調度品に囲まれ今朝も至福の目覚めを迎える・・・はずであった。

毎朝7時ちょうどに起こしにくるメイドの紗姫がやってこない。

「いや、お前起きてんじゃね？」という問題ではない。

ナディアは紗姫に起こされたいのだ。

実を言うと、紗姫がやってくる前から毎朝ナディアは目を覚ましている。

自分で起きて朝の準備くらい余裕でできる。

だがそんな姿を紗姫に見せたくないのだ。

『紗希ぃ〜！おフトゥンから出られなぃ〜！』

『まぁ！主様ったら、いつまで経ってもお子様が抜けませんわね、この紗姫が起こして差し上げます・・・どうしてもらいたいんですか？』

『ん〜もう！わかっているだろう？おはようございますのchuだよぉ』

『仕方ありませんね・・・今日だけですよ・・・』

朝から気持ち悪い声を出さないでいただけますか？！

扉の前でメイドの紗姫が呆れた顔（というより主を憐れむような冷たい視線である）でナディアを睨みつける。

「紗姫！・・・いつの間に？？」

「『仕方ありませんね〜今日だけですよぉ』とか枕に向かって変な事をなさっていたあたりからです！

成人になられるのももうすぐなのですから、私で妄想をなさるのはそろそろおやめください！」

「言うな！聞かれても口にするな本当に私が変態みたいではないか？！」

「変態ですよね、それも弩の付く」

「やめてくれ！それよりだ、お前、なぜ今朝私を起こしにくるのがこんなに遅くなったのだ？」

ナディアの質問に紗姫は少し顔を赤らめながら、

「そ、それは・・・昨夜ナディア様があんなに激しく・・・」

「おおっ！ひとばんじゅ・・・」

「フィットネスのゲームをなさっていたからですわ！」

「げっ！なぜ、それを？！・・・」

紗姫がツカツカと主の枕元に大股で近寄りながら

「バレないとお思いでしたの？

真夜中に！何時間も！どったんばったん飛んで跳ねた挙句『キエェェェェッ！』とか変な叫び声まで！」

「だってそれは紗姫が一緒に遊んでくれなかったから体力が有り余ってだな・・・」

「だからって当て付けがましく私の部屋の真上でドタバタなさらなくてもよろしいではありませんか？？！おかげでナディア様の体力が尽きるまで眠ることができませんでしたの！

お分かりとお思いですが私もナディア様と同じ大学生で、今日も一時限目から講義がありますから！お遊びに夢中ということは本日の課題もさぞかし難なく極上に仕上がっていることでしょうね私とても楽しみです！」

ナディアは枕で顔を隠しながら紗姫に赦しを乞う。

「わかった！すまない・・・」

「・・・本当に反省なさってます？」

「うん！すっかり私は心を入れ替えた！」

「うーん、多分3,500回くらいは」

「真面目にカウントしないでください！」

「相変わらず冗談が通じない子だな、紗姫は」

「主様のご冗談にお付き合いするほど暇ではありませんので」

深いため息をつきながら扉まで引き返した紗姫は、カートに載せた朝食をテーブルまで運んできた。

ナディアもベッドから飛び起きて席に座る。

今朝のメニューは（ここからナディアの音読紹介と紗姫のツッコミ）

紗姫が大切な主のために焼き上げたベーコンエッグと大盛り野菜の盛り合わせ

屋敷の料理長が作ったものです！

紗姫の愛情たっぷり焼きたてクロワッサン

馴染みのパン職人が朝届けてくださったものです！

紗姫が真心を込めて昨夜からコトコト煮込んだ完熟トマトのミネストローネ

一品ごとに私の名前を入れるのはおやめください！私がお作りしたのはこれだけです！

ナディアのライフはもうゼロである。

このいちごミルクはナディアの大好物。

毎朝紗姫がいちごと牛乳を主の好みに合わせて絶妙なバランスでミックスした至高の一品。

食材はイオネスク家と代々取引のある生産者から取り寄せ、料理のほとんどは屋敷付きの料理人たちが毎日腕を振るっているのだが、いちごミルクだけは紗姫が作っているのだ。

邸内の農園で一年中食べられるように管理された朝摘みのいちごの中から果肉が真っ赤に熟したものを紗姫が厳選している。

牛乳も牧場から送られてくる生乳のため臭みのない、バターのような濃厚さ・・・

そう、紗姫がナディアのためだけに手間暇をかけて・・・

「パパっと潰して牛乳と混ぜてグラスに注いだものです。」

「お前は雰囲気というものを大事にしない奴だなぁ」

「お腹に入れば同じです！早く食べちゃってください。大学の講義に遅れてしまいます。」

「あ〜わかりましたよ！いただきます」

紗姫もナディアと向かい側の席についた。

メイドではあるが紗姫はナディアの幼馴染であり食事を共にする事を強く求めているのだ。

ナディアがハムエッグにナイフを入れようとしたその時・・・

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