妖怪いそまるコレクション　No.9 狼男

わたしは只の文鳥だ。 だが満月の次の日になると天気次第で、鳥狼(とりおおかみ)になってしまう。 羽が青黒く染まり、牙が生え耳が生える。 視力は1.0だったのが、0.4〜0.6になる。免許更新の時はハラハラする。 聴覚はお金を落とした音を素早く聴き取れるようになり 味覚は少し苦手な固形のチーズが食べれるようになる。 だが変身して1番楽しみな事がある。 ドッグランに行く事だ。 いつも行くドッグランに 憧れのシベリアンハスキー先輩とゴールデンレトリバー先輩がいる。 2匹の先輩は人間に甘えるのが得意で、ドッグランでは大人気。 わたしにはとても出来ない。 実際にいつも イクラちゃんの完コピをしながら、人間達に甘えようとすると、 悲鳴をあげ、逃げてしまう。 ただ私は可愛い女の子の顔をベロベロしたいだけなのに、、、 そこでいつも指導してくれるのが、ハスキー先輩とリバー先輩だ。 わたしはこのお二方をマネする所から始めてみた。 まずはドンキーに行ってハスキーに寄せるため ブルーのカラコンを買い、 白と黒の染めQも買った。 リバー先輩はメスで両耳にリボンを２つしてるので、 漫画のりぼんを2冊買った。 もちろん姫ちゃんのリボンとご近所物語はしっかり読む。 そして、バカな顔をしながらカラコンを入れ、顔だけ白と黒に染めあげ、 両手にりぼんを1冊ずつ持つ。 いざドッグランへ。 私は自信に満ち溢れていた。 YouTubeでハスキーの動画と君に届けをしっかり頭に入れてきた。 私は入り口の２つのドアを開け、犬が脱走しないようにしっかりカギをかける。 まずはハスキー先輩とリバー先輩に挨拶し、 ミーティングに入る。 ハスキー先輩は、 今回1番仕上げてきたね！と褒めてくれた。 リバー先輩は、りぼんのときめきトゥナイトと赤ずきんちゃちゃに夢中である。 今日は完璧だ。今日はかわい子ちゃんの顔をベロベロできる。 いっやほーー！！ あっ、しまった、声に出てしまった。 さーてかわい子ちゃ、、、 と、思った時である。 目の前に警察らしき2人が片足で立っていた。 そう、通報されたのだ。 ハスキー先輩とリバー先輩に一緒に事情を話してもらおうとしたが、 2匹は何か物陰でゴソゴソやっていた。 鳥狼は驚愕した。 ハスキーとリバーが真っ白な体になっていた。 なんと、彼らは鼻の周りが汚いマルチーズの兄弟だった。 2匹はハスキーとリバーの着ぐるみを着ていたのだ。 うわ〜やってるよこのチンピラ犬 そう、このマルチーズ2匹は地元じゃ有名なチンピラ兄弟。 鳥狼ははめられ、もうだめだと思っていた。 警察が片足でハネながら近づいてくる。 すると予期せぬ事が起こる。 警察はマルチーズを取り押さえ、ワッパをかけたのである。 マルチーズ達は慌ててVAR (よくスポーツなのどで審判では判断できない時にモニターで確認する行為) を要求したが、問答無用で連行された。 鳥狼はキョトンとするが、 周りの人達、犬達からスタンディングオベーションが巻き起こり、 拍手がなりやまない。 喝采がドッグランを包む。 鳥狼は喜び、調子に乗ってかわい子ちゃんにベロベロしようとしたがビンタされた。 そこから記憶がなく、気づいた時には北海道にいた。 実は鳥狼はビンタされたあと、キレてしまいドッグランにいた者達を殲滅してしまった。 その後鳥狼を見たものはいない。 そして満月の次の日の天気が良い夜に、どこからともなく富良野あたりで 狼の遠吠えが鳴り響くとの事である。 終