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きっかけはN国の月面探索隊の失踪だった。人類がまだ見ぬ月の裏側への着陸を試みた際、突如として通信が途絶えたのだ。N国宇宙開発センターは慌てふためいた。N国はF国やT国にも協力を要請して原因を探ったが、結局わからず終いであった。結論から言うと、N国の宇宙船は撃墜された。月の裏側に住む、月面人の手によって。そして、今度は月面人たちの船がN国上空に姿を現した。宇宙船は空高く静止したまま1時間が過ぎた。ここまで長々と姿を見せる未確認飛行物体はそういない。月面探索隊の船が攻撃されたばかりということもあり、N国ならびに世界中の国々が警戒していた。最悪の場合、侵略者の宇宙船という可能性もあるため、各国は軍隊の出撃準備も整えていた。ところが、月星人たちの目的は謝罪であった。N国を中心とした世界の主要な国々に月面人たちのたちからの通信が入った。 「地球の言語を解析するのに時間がかかってしまった。我々は月面人。この度は手違いで地球の宇宙船を攻撃してしまい、申し訳なく思っている。」 彼らの話によると、N国の宇宙船が着陸に先行して月面探査用ロボットを発射したため侵略攻撃を受けたと誤認し、ミサイルで迎撃したというのがことの顛末らしかった。月面人はとんでもないことをしてしまったと謝罪を繰り返した。地球側は面食らった。一時は侵略者との戦争すら覚悟していたため、なんともまあ拍子抜けであった。地球側はこの謝罪を受け入れることにした。明らかに科学力が優る月面人は軍事力も地球を上回っていることは容易に想像でき、そのような相手が下手に出てきている以上、寛大に受け入れたほうが得策だろうという判断である。地球を代表した、N国が月面人とコンタクトをとることとなった。N国代表の外交官と月面人が、N国議会で対峙した。 「とんでもない。こちらが土足であなた方の家に入ろうとしたようなもの。それをわざわざ謝罪いただけるとは。こちらこそ申し訳ない。」 N国外交官と月面人代表は固く握手をした。 「なんと寛大な方々だ。地球の皆さんは素晴らしい心をお持ちだ。だが、それでは我々の気が済まない。何かお詫びをさせてほしい。」 月面人はとにかく謝罪がしたいと言って聞かなかった。 「お詫びだなんてとんでもない!」 そう言いながらも、N国外交官は内心しめたぞとほくそ笑んでいた。 衝撃のシュルレアリスム文学。待望の一編は袋とじにて完結。乞うご期待。
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