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魔界の入口。そう言われると、特にそれが本物であったらなら、恐らくほぼ全ての人がその先に進むことを躊躇するだろう。だが、魔界の出口で躊躇するのはミス・Pくらいのものではないだろうか。ミス・Pは紛れもない純血の人間であった。しかし、彼女の記憶は魔界から始まっていた。彼女は捨て子だった。ミス・Pの母はシングルマザーであった。ミス・Pを身籠ったとき、彼女は夢を追い勉学に励む学生だった。相手の男は彼女の妊娠を知ると逃げていったのだが、彼女は初め独りでミス・Pを育てながら学校に通うつもりであった。意地のようなものがあったのかもしれない。だが、実際に出産し、子育てと勉学の両立が厳しいことを痛感すると、彼女はミス・Pを捨てた。夢のためにミス・Pが邪魔になったのだ。そして、ミス・Pが捨てられた場所こそ、魔界に通じる入口だったのだ。それゆえにミス・Pの記憶は魔界から始まるのであった。彼女は魔界で育てられた。 「人間の子供は高級食材として高く売れる。」 そう言って彼女を引き取った魔界の住人であったが、欲深い彼は 「もう少し大きくして可食部位を増やしてから売ろう。」 と彼女を育てた。だが、そうこう言っているうちにミス・Pは成長し、食用として美味である歳を超えてしまった。魔界の住人は残念がり、途端に彼女への興味を失った。そして、こう言った。 「おい、お前は人間っていう生き物だ。俺みたいに翼や角、尻尾がないだろう?人間は人間の世界に住むべきだ。お前、親に捨てられて魔界にきたんだぜ。今から人間のことを教えてやるから、とっとと人間の世界に帰るんだな。」 ミス・Pは人間世界のことを教えられた。そして今、彼女は魔界の出口に立ち尽くしていた。「人間ってのは戦争ばっかするし、どんどん環境も壊すらしい。おまけに自分の子供も捨てるときた。人間の世界って恐ろしいところなんじゃないだろうか。」 ミス・Pはそう思うと足が竦んだ。こうして、魔界の出口に1人の女性が立ち尽くすという奇妙な画ができあがっていた。 衝撃のシュルレアリスム文学。待望の一編は袋とじにて完結。乞うご期待。
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