宵空に舞う祈りの都 ― 星砂を運ぶ気球たち

夕暮れと夜明けの境界線。空と海が溶け合う蒼の地平に、無数の気球が静かに浮かび上がる――。 本作「宵空に舞う祈りの都 ― 星砂を運ぶ気球たち」は、幻想と旅情、そして“物語の気配”を凝縮した一枚です。 岩肌をくり抜くように築かれた古都は、現実のどこにも属さないにもかかわらず、確かな生活の温度を感じさせます。窓から漏れる柔らかな灯り、石畳に敷かれた文様豊かな絨毯、卓上に並ぶ果実やランプ。細部まで描き込まれた要素が、鑑賞者の記憶や想像力を自然に呼び覚まします。 空を舞う気球は、単なる装飾ではありません。時間、願い、あるいは物語そのものを運ぶ象徴として配置され、画面全体に“上昇するリズム”を与えています。暖色と寒色の絶妙なコントラストにより、静けさと高揚感が同時に成立し、長く見つめるほどに印象が深まります。