僕が修行した洋食屋には、それはそれは怖い店長がいました。

見た目はヒョロガリなんですが、顔が鈴木亮平なのでイカツイんですよね。

まだ、新入りで『洗い場』に立ってた時、

「東根ッ！皿足りねーぞ！」

と怒鳴られ、更に忙しい時は、

「おせぇよ！バカッ！」

と太ももにローキック（半分本気）をされてました。

一度、あまりの僕の遅さにガチギレした時の行動が、

『無言で僕を押し退けて、自分で皿を洗い、自分で持って行く』

でした。アレは怖かった。

完全にクビを覚悟した瞬間でしたね。

そんな店長ですが、店が終わると、

「オイ、ジョナサンでサンデーフェアやってるから食い行くぞ。」

と若手を誘ってスイーツを食べに行くような人で、実は面倒見のいい兄貴分て感じでした。

ある年のクリスマスの前夜、

「東根さぁ、お前、店終わったら予定は何かあんの？」

「いえ、帰るだけです。」

「じゃあ、手伝え。料理の勉強にもなるから。」

何を手伝わされるかは分からないけど、自分のスキルを上げれるならと即答で「ハイッ！」。

まぁ、あと店長が怖いんでね。笑

店が終わった後に店長が作り出したのは、苺のショートケーキ。

元フレンチのシェフである店長が作るケーキは、めっちゃ綺麗だったのでビックリしました。

ヘラだけで美しい装飾を作り出す技はプロ以外の何ものでもありませんでした。

「これ、明日お店で出すんですか？」

と聞くと、店長はボソッと、

「娘に持って行くんだよ。」

話を聞くと、

店長はバツイチで娘とは月イチに会える状態だったらしく、クリスマスに会えることになったので『離れて暮らす娘』に苺のショートケーキ（ホールで）を作ったのでした。

そんな素敵なプレゼントに関われた嬉しさと、店長の可愛いらしい部分が見れたほっこりした話でした。

洋食屋修業の【ほっこり話】