フェル・ルレーヌを守護する森の女神（緑竜）は自身の代理として、魔力の高い女児を選び女王としてこの国を統治させている。

女王の死期が迫ると、森の女神は次期女王（緑姫）を選ぶことが慣習であった。

この緑姫に選ばれたのが、幼いころから妖精と精霊に愛されて育ったラシェレラという少女だ。

と呼ばれ、現女王の補佐をしながら女王として教育を受ける。

だが遊びたい盛りのラシェレラは緑姫の立場に慣れず、

も巻き込んでコッソリ館を抜け出しては近くにあるパーライト湖（非常に透明度の高い水深の浅い淡水湖、陽光に照らされると角度によって青や緑色に見える。この湖にのみ生息する淡水魚のリルは、森の女神の好物と言われている。）に遊びに行くのだった。そしてその後、館に戻ると3人は

にこっぴどく叱られる･･････。そこまでがいつもの流れである。

いつも通り館を抜け出した3人は、館のすぐそばの森で足を負傷した白い子狐を見つける。

（白い狐はフェル・ルレーヌの北に位置するシルバーフェイズウッドにのみ生息する）

リケルとレイアの制止を振り切って、ティルターニャは怯える子狐にゆっくりと近づき、癒しの魔法を掛けるのだが、なぜか傷が一向に塞がらない。傷口は黒くどす黒い色に変わり、状態は酷くなっていくようにも感じられた。

前にもこんなことがあったーーーと、ティルターニャは思った。

この救いたくても救えず、苦しんでいるのをただ見守る事しかできない状態は。

自分にとって初めての事ではない？

やがて子狐の白い体に小さな黒い斑紋が出来始める。

それが危険だと分かった時には、時すでに遅く子狐は黒い瘴気を放つ魔獣となってしまったのである。

ティルターニャの魔力を吸った魔獣は、修行中のリケルとレイアには強すぎた。

負傷しそれでもティルターニャを護ろうとするその背中を、逃げることも出来ずにティルターニャはただ泣きながら見つめるばかりであった。

突如、剣士ソアナの剣が魔獣の片目に突き刺さる。

それがこの魔獣の核だったのだろう、魔獣は息絶え塵と化した。

リケルとレイアはこれまで以上に修行に専念するようになった。

ソアナだけでなく冒険者として各地を旅していた

からも指導を受け、魔法を覚えたいと

それはティルターニャも同じであった。

次期女王として役目を果たせるように出来る事は何でも行い、学び、全てを自らの糧にするようになった。

妖精・精霊との積極的な交流。祝福の祝詞の理解とその構成法。フェル・ルレーヌの成り立ちと、女神の加護についての知見。

負の感情を持った死せる魂を思いの深い花へと変化させ星界へと誘う「緑化」の力

その意識的な発現のためには相応の修練を必要とした。

「穢れと浄化」「生と死の輪廻」、「星界と異界」の概念、花を媒体とした星界への道標の構築。そして「緑化」能力の貸与まで。

そう。できることは何でも、だ。

現女王が永い眠りにつき、ラシェレラは緑姫ティルターニャとしての立場から、新女王ティルターニアとして即位した。

即位の儀が終わると、森の女神から伝承の儀を受ける。

伝承の儀は、現在を司る森の女神が、これまで歴代の女王の記憶とラシェレラの前世の記憶を現在につなげる儀を指す。

それは森の女神が見せたとてつもなく長い物語であった。

兄と妹、強く美しい父と優しく温かな母に愛されて育ったこと。

初めて誰かを尊敬し心の底から愛したけど決して叶わなかったこと。

あるとき自分は、聖乙女と呼ばれるエルフ族だったこと。

とある宗教団体に囚われ、利用され、必死で逃げたけれど逃げ切れなくて息絶えたこと。

いつも傍にいて常に自分を包み込んでくれたけれど，力なき自分を守る為に悲しい結末を選んだ唯一の友のこと。

ティルターニアの中で全てが凝縮し、継承されていく。

緑姫"ティルターニャ"はまさに「女王"ティルターニア"」となったのだ。

程なくして、ティルターニアの元に

アヌカタールはエルーカ皇国のケレック地区に現れ、資格試験中の学生一行を襲ってそのうち一人に呪いを掛けた。

セイリーン公国のレイノルト家の令嬢

であった為、レイノルト当主が多額の懸賞金を掛け討伐隊を送っているが、神出鬼没の魔獣である事と、近づく者に死の呪いを与える為、討伐が難航しているとのことだった。

ティルターニアは、レイノルト当主に一通の文を送り討伐に名乗りをあげる。

そして、剣士ソアナに祝福と自らの緑化の力を彼女に授けてアヌカタール討伐を命じたのだ。

また、剣士ソアナはその討伐に風の魔法使いシルフィーネの同行の許可をもらい、万全を期した。

風の魔法使いシルフィーネの援護を受け、

ソアナは漆黒獣“アヌカタール“と対峙する。

禍々しいオーラを放つ黒き獣は、さながら死神の様であった。

シルフィーネのバリアに守られたソアナに、躊躇うことなく先制攻撃を仕掛ける漆黒獣。

その一瞬。ソアナはその攻撃に違和感を感じた。

漆黒の獣が放つ殺気は間違いなく本物である。

その攻撃も、いわゆる「獣」のような、決して勢いに任せた単調なものではない。

力を込めた後脚で大地をえぐりながら跳躍し、疾風の如く突進してきたかと思うと、こちらの剣の切先が届く直前でサイドステップ。邪気をこめた咆哮でこちらを威嚇しつつ、前脚の鋭い爪で確実に急所を狙ってくる。

これまで、どれほどの命を散らせてきたのか。

様々な戦闘パターンが体に染み付いている。戦い慣れている。

が。ソアナが気づかないはずはない。

アヌカタールは攻撃の後、瞬きほどの間ではあるが、体を硬直させることがある。

歴戦の強者を屠ってきた獣がそんな隙を見せるだろうか。

いや、それはまるで何者かに操られるのを必死で抑え込んでいるかのような。

そして、それはまるでソアナの刃をその身に受けようとしているかのような･･････。

フェル・ルレーヌを守護する森の女神（緑竜）は自身の代理として、魔力の高い女児を選び女王としてこの国を統治させている。女王の死期が迫ると、森の女神は次期女王（緑姫）を選ぶことが慣習であった。この緑姫に選ばれたのが、幼いころから妖精と精霊に愛されて育ったラシェレラという少女だ。ラシェレラは<a rel="noopener noreferrer nofollow" href="https://nft.hexanft.com/nftmatic/47507">緑姫"ティルターニャ"</a>と呼ばれ、現女王の補佐をしながら女王として教育を受ける。だが遊びたい盛りのラシェレラは緑姫の立場に慣れず、<a rel="noopener noreferrer nofollow" href="https://nft.hexanft.com/nftmatic/47530">リケルやレイア</a>も巻き込んでコッソリ館を抜け出しては近くにあるパーライト湖（非常に透明度の高い水深の浅い淡水湖、陽光に照らされると角度によって青や緑色に見える。この湖にのみ生息する淡水魚のリルは、森の女神の好物と言われている。）に遊びに行くのだった。そしてその後、館に戻ると3人は<a rel="noopener noreferrer nofollow" href="https://nft.hexanft.com/nftmatic/46259">ソアナ</a>にこっぴどく叱られる･･････。そこまでがいつもの流れである。＜人物相関図＞<img src="https://asset.hexanft.com/rich_text_attached_images/a04c26d1-6538-454d-a799-e22a462f30f0.png" alt="" width="auto" height="auto"><h4>ある日のこと。</h4>いつも通り館を抜け出した3人は、館のすぐそばの森で足を負傷した白い子狐を見つける。（白い狐はフェル・ルレーヌの北に位置するシルバーフェイズウッドにのみ生息する）リケルとレイアの制止を振り切って、ティルターニャは怯える子狐にゆっくりと近づき、癒しの魔法を掛けるのだが、なぜか傷が一向に塞がらない。傷口は黒くどす黒い色に変わり、状態は酷くなっていくようにも感じられた。<hr>前にもこんなことがあったーーーと、ティルターニャは思った。この救いたくても救えず、苦しんでいるのをただ見守る事しかできない状態は。自分にとって初めての事ではない？<hr>やがて子狐の白い体に小さな黒い斑紋が出来始める。それが危険だと分かった時には、時すでに遅く子狐は黒い瘴気を放つ魔獣となってしまったのである。ティルターニャの魔力を吸った魔獣は、修行中のリケルとレイアには強すぎた。負傷しそれでもティルターニャを護ろうとするその背中を、逃げることも出来ずにティルターニャはただ泣きながら見つめるばかりであった。突如、剣士ソアナの剣が魔獣の片目に突き刺さる。それがこの魔獣の核だったのだろう、魔獣は息絶え塵と化した。<hr><h4>この事件をきっかけに、</h4>リケルとレイアはこれまで以上に修行に専念するようになった。ソアナだけでなく冒険者として各地を旅していた<a rel="noopener noreferrer nofollow" href="https://nft.hexanft.com/nftmatic/47256">シュバルツァ</a>からも指導を受け、魔法を覚えたいと<a rel="noopener noreferrer nofollow" href="https://nft.hexanft.com/nftmatic/47526">風の魔法使いシルフィーネ</a>からも学ぶようになった。それはティルターニャも同じであった。次期女王として役目を果たせるように出来る事は何でも行い、学び、全てを自らの糧にするようになった。妖精・精霊との積極的な交流。祝福の祝詞の理解とその構成法。フェル・ルレーヌの成り立ちと、女神の加護についての知見。特に彼女の唯一無二の能力、負の感情を持った死せる魂を思いの深い花へと変化させ星界へと誘う「緑化」の力。その意識的な発現のためには相応の修練を必要とした。「穢れと浄化」「生と死の輪廻」、「星界と異界」の概念、花を媒体とした星界への道標の構築。そして「緑化」能力の貸与まで。そう。できることは何でも、だ。<hr><h4>それからほどなくして</h4>現女王が永い眠りにつき、ラシェレラは緑姫ティルターニャとしての立場から、新女王ティルターニアとして即位した。即位の儀が終わると、森の女神から伝承の儀を受ける。伝承の儀は、現在を司る森の女神が、これまで歴代の女王の記憶とラシェレラの前世の記憶を現在につなげる儀を指す。それは森の女神が見せたとてつもなく長い物語であった。<blockquote>兄と妹、強く美しい父と優しく温かな母に愛されて育ったこと。初めて誰かを尊敬し心の底から愛したけど決して叶わなかったこと。あるとき自分は、聖乙女と呼ばれるエルフ族だったこと。とある宗教団体に囚われ、利用され、必死で逃げたけれど逃げ切れなくて息絶えたこと。いつも傍にいて常に自分を包み込んでくれたけれど，力なき自分を守る為に悲しい結末を選んだ唯一の友のこと。</blockquote>ティルターニアの中で全てが凝縮し、継承されていく。そう。この時。緑姫"ティルターニャ"はまさに「女王"ティルターニア"」となったのだ。<hr>程なくして、ティルターニアの元に<h4>”漆黒獣アヌカタール現る”</h4>という知らせが届く。アヌカタールはエルーカ皇国のケレック地区に現れ、資格試験中の学生一行を襲ってそのうち一人に呪いを掛けた。それが<a rel="noopener noreferrer nofollow" href="https://nft.hexanft.com/nft/issue/JAlm07Xr">セイリーン公国のレイノルト家の令嬢</a>であった為、レイノルト当主が多額の懸賞金を掛け討伐隊を送っているが、神出鬼没の魔獣である事と、近づく者に死の呪いを与える為、討伐が難航しているとのことだった。ティルターニアは、レイノルト当主に一通の文を送り討伐に名乗りをあげる。そして、剣士ソアナに祝福と自らの緑化の力を彼女に授けてアヌカタール討伐を命じたのだ。また、剣士ソアナはその討伐に風の魔法使いシルフィーネの同行の許可をもらい、万全を期した。<hr>風の魔法使いシルフィーネの援護を受け、<h4>ソアナは漆黒獣“アヌカタール“と対峙する。</h4>禍々しいオーラを放つ黒き獣は、さながら死神の様であった。シルフィーネのバリアに守られたソアナに、躊躇うことなく先制攻撃を仕掛ける漆黒獣。その一瞬。ソアナはその攻撃に違和感を感じた。漆黒の獣が放つ殺気は間違いなく本物である。その攻撃も、いわゆる「獣」のような、決して勢いに任せた単調なものではない。力を込めた後脚で大地をえぐりながら跳躍し、疾風の如く突進してきたかと思うと、こちらの剣の切先が届く直前でサイドステップ。邪気をこめた咆哮でこちらを威嚇しつつ、前脚の鋭い爪で確実に急所を狙ってくる。これまで、どれほどの命を散らせてきたのか。様々な戦闘パターンが体に染み付いている。戦い慣れている。が。ソアナが気づかないはずはない。アヌカタールは攻撃の後、瞬きほどの間ではあるが、体を硬直させることがある。歴戦の強者を屠ってきた獣がそんな隙を見せるだろうか。いや、それはまるで何者かに操られるのを必死で抑え込んでいるかのような。そして、それはまるでソアナの刃をその身に受けようとしているかのような･･････。女王から賜った「緑化」の力は、負の感情をもった死せる魂を浄化し、花として生まれ変わらせる力だ。そう、恐らく、アヌカタールのようなモノにこそ真価を発揮すると直感した。それこそが、女王から「緑化」を託された真意だ。漆黒獣の右前脚の袈裟懸けを左切り上げで受けた瞬間、時が止まった。飛び散る火花の陽炎の中に見えたのは<a rel="noopener noreferrer nofollow" href="https://nft.hexanft.com/nftmatic/48560">微笑むエルフの少女と、黒い毛並みの狼犬の姿</a>。時が動き出した後もやはり訪れる、漆黒獣の硬直。ソアナは「緑化」の力を剣に行きわたらせ、やや無理な体制ではあったが、体に纏う風の力を借りて、アヌカタールの額に剣を突き刺す。その傷口から謎の黒い刻印が滲み出たかと思うと、サラサラと塵となって消えていく。女王が言うには、浄化後に咲く花はその魂が一番大切にしている想いや言葉が花になるのだという。アヌカタールが居たその場には、真珠のように淡く輝く星形の花が、凛と咲いていた。<hr>ソアナがフェル・ルレーヌに戻ったのは早朝であった。一刻も早くこの花を女王に届ける為、ソアナは寝ずに帰路に着いたのだ。そうしてソアナはシルフィーネの魔法で大切に守られたその花を、女王に手渡す。”ありがとう”と呟いた女王の瞳からは一筋の涙がつたった。今。「緑化」によって魂を浄化された"アヌ”は、星形の花に姿を変え、かつて聖乙女"イルメア”だった者の手に優しく包まれている。<hr><h4>女王への謁見を済ませたソアナにシルフィーネが問う。</h4>　「どうしてあの花を女王に渡したの？」　「女王がそれを望まれていたから。」　「そんなことおっしゃってたかなぁ？」<hr><hr>アヌカタールは，昔アヌだった頃に聞いたことがあった。遠い昔、一人の大天使が少女を殺すために天から降りてきたという。だが少女には加護があったため、大天使は人間の姿で少女に近づき機会を待った。ところが少女と一緒に過ごすうち、大天使は少女と想い合うようになる。引き裂かれそうになった二人を神が祝福し、それによってふたりは永遠の愛を誓った。その際大天使が少女に贈った花が、星の形をした真珠のように淡く輝く美しい花であったという。それ以降この花に、大天使のプロポーズの言葉が花言葉として受け継がれた。"I will always be with you, a promise of eternity."

Queen "Tiltania" -女王 "ティルターニア"- #52

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