人を毛嫌いする森があるという。

フェル・ルレーヌ国の北側に位置するシルバーフェイズウッド。

俗にシルフェイドと呼ばれるこの森は，どうにもよい噂は聞かない。

が泣きそうな表情で訴えてきたが，何事も自分の足でその大地を踏まないことには何も分からない。

「知る」これは何にも勝る、彼女の強い欲求であった。そして，彼女のこれまでの人生を支えてきた信念でもあった。

ただひとつこれまでと違うのは。

彼女を突き動かしていたのが，純粋に「知りたい」という思いではなく，「知らねばならない」という使命感であったことだ。

彼女の手には羊皮紙に包まれた本があった。

難解な封印術で，無理に開こうとすると恐らく命を取られる。

は有名人だがーー。きっと嫌なヤツだ。

そんなことを思いながら，しかし，みんなを守るためにはこの書をひもとかねばならない。

おそらく，求めているパズルの1ピースが，ことによると数ピースが，この中にあると彼女は確信していた。

ここに至るまで，相応の時間を要している。

仮になんらかの影響があっても，森の奥深くなら迷惑をかけることもないだろう。人を嫌う森ならなおさらだ。

そんな思いで彼女はこの地に立ち，この森で封印の解除を試みるのだった。

間違いなく，二重の封印が施されている。1つ解除しても，もう1つがその瞬間に連動して発動するタイプ。

の力を借りて描いた魔法陣を2つ使う。

1つは石の台座に羊皮紙に描いた魔法陣を設置。その上に禁書を表紙を下にして置く。さらにその上に，魔法陣を刻んだ石版を禁書に重ねる。羊皮紙と石版でサンドイッチする形だ。

1つ目を解除した際に羊皮紙は燃え尽きるが，その際に発生した呪言を上の石版で吸収する。後は誰にも触れられぬよう石版を封印すればよい。

はもうこの世を去ったが，彼女のクールなドヤ顔がなんとなくそばにある気もする。

魔法陣を起動させるため，右手の杖から魔力を注ぎ込む。

決して間違えないよう，羊皮紙にメモした呪文を左手の指でなぞりながら慎重に唱える。

羊皮紙と石版がそれぞれ淡く発光し，禁書がわずかに浮遊する。

呪文を唱え終わった瞬間，1つ目の羊皮紙が炎に包まれたかと思うと，現れた禍々しい影が炎ごと上の石版に吸い込まれた。

これまでの労力の割りに，あっという間ではあったが。

何て事だ。「解除できた」という安堵感につけ込む時間差の呪い。

間違いなくこの本の著者は嫌なヤツだーー。

気が付いたときは遅い。周囲の視界が狭まり，闇が迫ってくる。

と，声なき声がもれたその時，

ーーハープ？歌声･･････？

どれくらい気を失っていただろう。日はもう傾いている。

気が付けば，禁書は石の台座から滑り落ちていた。

ちょうど月の魔法陣のページが開かれている。

ハープを奏でた大樹の精霊は「

確か，盲目の吟遊詩人の名前だったと記憶している。

の子どもなんてめずらしいと思ったから，間違いない。

おとぎ話だと思っていたのだが･･････。

その日から彼女は禁書を読みあさる。

人嫌いの森「シルフェイド」はそんな彼女につくした。

時に精霊が奏でる音楽の癒しを。

人嫌いの精霊を惹きつける何かが彼女にはあるのか。

彼女の過酷な運命を憂いてのことなのか。

いずれにせよ、シルフェイドが彼女に対し敬意を表していることは疑いようがなかった。

<h4>人を毛嫌いする森があるという。</h4>フェル・ルレーヌ国の北側に位置するシルバーフェイズウッド。俗にシルフェイドと呼ばれるこの森は，どうにもよい噂は聞かない。ーー絶対にやめた方がいい。そんなことを<a rel="noopener noreferrer nofollow" href="https://nft.hexanft.com/nft/issue/VRoEB0kA">後輩</a>が泣きそうな表情で訴えてきたが，何事も自分の足でその大地を踏まないことには何も分からない。「知る」これは何にも勝る、彼女の強い欲求であった。そして，彼女のこれまでの人生を支えてきた信念でもあった。ただひとつこれまでと違うのは。彼女を突き動かしていたのが，純粋に「知りたい」という思いではなく，「知らねばならない」という使命感であったことだ。＜人物相関図＞<img src="https://asset.hexanft.com/rich_text_attached_images/3ec71146-0000-4491-b5f7-d2f25d2df2fc.png" alt="" width="auto" height="auto">彼女の手には羊皮紙に包まれた本があった。難解な封印術で，無理に開こうとすると恐らく命を取られる。<h4>そう。禁書だ。</h4>ーーこの<a rel="noopener noreferrer nofollow" href="https://nft.hexanft.com/nft/issue/bYXQkq4A">本の著者</a>は有名人だがーー。きっと嫌なヤツだ。そんなことを思いながら，しかし，みんなを守るためにはこの書をひもとかねばならない。おそらく，求めているパズルの1ピースが，ことによると数ピースが，この中にあると彼女は確信していた。入念な準備を行った。封印の種類と数の調査。封印解除の鍵の推定と特定。封印解除の準備。ここに至るまで，相応の時間を要している。仮になんらかの影響があっても，森の奥深くなら迷惑をかけることもないだろう。人を嫌う森ならなおさらだ。そんな思いで彼女はこの地に立ち，この森で封印の解除を試みるのだった。間違いなく，二重の封印が施されている。1つ解除しても，もう1つがその瞬間に連動して発動するタイプ。そのために，<a rel="noopener noreferrer nofollow" href="https://nft.hexanft.com/nftmatic/47286">メルトス魔法学院学長</a>の力を借りて描いた魔法陣を2つ使う。1つは石の台座に羊皮紙に描いた魔法陣を設置。その上に禁書を表紙を下にして置く。さらにその上に，魔法陣を刻んだ石版を禁書に重ねる。羊皮紙と石版でサンドイッチする形だ。1つ目を解除した際に羊皮紙は燃え尽きるが，その際に発生した呪言を上の石版で吸収する。後は誰にも触れられぬよう石版を封印すればよい。この仕組みの素案を考案した氷の魔法使いはもうこの世を去ったが，彼女のクールなドヤ顔がなんとなくそばにある気もする。魔法陣を起動させるため，右手の杖から魔力を注ぎ込む。決して間違えないよう，羊皮紙にメモした呪文を左手の指でなぞりながら慎重に唱える。羊皮紙と石版がそれぞれ淡く発光し，禁書がわずかに浮遊する。呪文を唱え終わった瞬間，1つ目の羊皮紙が炎に包まれたかと思うと，現れた禍々しい影が炎ごと上の石版に吸い込まれた。これまでの労力の割りに，あっという間ではあったが。<h4>ーー成功だ。</h4>そう安堵しかけた直後。何て事だ。「解除できた」という安堵感につけ込む時間差の呪い。ーー精神系っ！？間違いなくこの本の著者は嫌なヤツだーー。気が付いたときは遅い。周囲の視界が狭まり，闇が迫ってくる。あ･･････。と，声なき声がもれたその時，<h4>ーーハープ？歌声･･････？</h4>どれくらい気を失っていただろう。日はもう傾いている。気が付けば，禁書は石の台座から滑り落ちていた。ちょうど月の魔法陣のページが開かれている。封印は，解かれたのだ。ハープを奏でた大樹の精霊は「<a rel="noopener noreferrer nofollow" href="https://nft.hexanft.com/nftmatic/46483">シルヴァナ</a>」と名乗った。確か，盲目の吟遊詩人の名前だったと記憶している。<a rel="noopener noreferrer nofollow" href="https://nft.hexanft.com/nftmatic/46679">元天使</a>と<a rel="noopener noreferrer nofollow" href="https://nft.hexanft.com/nft/issue/oAN36bEr">踊り子</a>の子どもなんてめずらしいと思ったから，間違いない。おとぎ話だと思っていたのだが･･････。その日から彼女は禁書を読みあさる。人嫌いの森「シルフェイド」はそんな彼女につくした。時に森の恵みで活力を。時に穏やかな読書の場を。時に精霊が奏でる音楽の癒しを。人嫌いの精霊を惹きつける何かが彼女にはあるのか。彼女の過酷な運命を憂いてのことなのか。いずれにせよ、シルフェイドが彼女に対し敬意を表していることは疑いようがなかった。

Hermit ｰ隠者ｰ #46

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