約三百年前、江戸時代の四谷左門町に、お岩という名の良家の娘がいました。幼い頃、天然痘に罹患し、その痕は彼女の顔を醜く深く傷つけた。父である又左衛門は、娘の結婚を望み、貧しい浪人を連れてきました。この浪人は、長年の困窮に疲れ、お岩の醜い顔にもかかわらず婿となることを承諾します。

父の死後、この婿は誠実に働き、上役に気に入られました。特に一人の上役が彼を可愛がり、頻繁に自宅に招きました。そこで彼は、その家で働く女中に惹かれ、やがて彼女に心を奪われました。しかし、お岩と離れれば、彼は再び浪人へと戻る運命にありました。

愛する女性と一緒になれない彼は、醜い顔のお岩への憎悪を深め、酒に溺れ、仕事を怠るようになりました。困惑したお岩は、親切にしてくれた上役に相談に行きましたが、上役は婿と女中を結び付けようとし、お岩に一時的に隠れるよう進言しました。

お岩は言われた通りに行動しましたが、婿は彼女が家族を捨てて出奔したと嘘をつき、上役の女中と堂々と夫婦となりました。一方、お岩は婿が迎えに来る日を待ちわびていましたが、彼は決して現れませんでした。

ある日、お岩の元にたばこ売りが現れ、婿の新しい妻とのことを打ち明けました。その話を聞いたお岩は、怒りに震え、素足のまま飛び出し、行方不明となりました。

その後、婿の周囲で奇妙な出来事が続発しました。新しい妻と共に眠る夜、お岩の幽霊が現れ、恨めしそうに彼を見つめました。生まれた子どもたちは不慮の病で死に、新しい妻の美しい顔は次第に醜いお岩の顔に変わり、二人は狂死しました。

お岩を裏切った上役の家族も、彼女の呪いによって死にました。以後、お岩の家の跡に住んだ者は、いずれも原因不明の病で命を落とし、人々は家の跡地に稲荷神を祀り、お岩の供養を始めました。

それ以降、お岩の怨念は消えたと言われています。この物語は、愛と裏切り、そして哀れな運命を背負った一人の女性の悲劇を描いたもので、時代を超えて語り継がれる、江戸の哀しい伝説です。

四谷怪談 幽霊お岩の不朽の伝説